乳歯列の反対咬合 の治療と考え方 |
3歳ごろ治療をするか、永久歯の交換まで待つか、二通りの考え方があります。私は乳歯列の完成後、聞き分けができてくる3歳を目途に早期に治療した方が良いと考えています。反対咬合のまま永久歯の交換を待つと、顎の骨がそれに順応して、上顎は奥に引っ込んだ形、下顎は前に出た形になってしまいます。永久歯は乳歯の下から生える訳ですから、永久前歯も反対咬合の可能性が高くなります。 早期に反対咬合を改善しておけば、前歯が永久歯に変わる小学校2年生ごろまでの5年間ほどを、正常な噛み合わせで過ごせるので顎骨も正常に育ち、その場所に生える永久前歯も正常咬合が期待できます。 治療装置:ムーシールド(現在のメイン) チンキャップ ジャンピングプレート |
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MUEshieldを使用しての感想 S.Eちゃんの母より (原文のまま) |
眠っている間だけ装着すれば乳歯の反対咬合が治せるとのことで、2歳10ヶ月より装着し始めました。 最初は違和感がかなりあったようで、1~2時間が精一杯でなかなか長時間装着する事ができませんでしたが、少しずつ時間を伸ばし、1年程でムーシールドを卒業することができました。子供にとっては慣れてしまえば負担が少なく、小さいうちに治療できとても良かったです。 これもなかなか装着時間が伸びず、焦っていた時も、いろいろな方法を提示してくれ、やさしく気長に対応してくださった、先生や衛生士の方々のお陰だと思います。 どうもありがとうございました。 |
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実際の当院治療例 | ||||
ムーシールド 治療前 |
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約1年間装置装着 治療後 横顔が中高になっています 良い側貌ですね! |
反対咬合の早期初期治療 ムーシールド™(機能的顎矯正装置)の機能および使用方法 |
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1.はじめに -経過観察の勧め? -不正咬合の治療については、いつ、どのような術式で、開始する事が、最善の方法であるか、古くから議論のあるところです。とりわけ、反対咬合症例には、低年齢時期から、健診あるいは、臨床の場面に於いて遭遇する機会が多いものです。しかし、医療現場では必ずしも、一致した見解を、患者サイドに示しているとはいえないのが、現実です。時に、明確な根拠を持てぬまま、経過観察を勧めていることも、多いのではないかと思われます。 2.乳歯列期反対咬合の問題点 -自然治癒率-永原1)は、乳歯列期反対咬合の自然治癒率について、報告しています。 永原の表を元に、ⅢA期への推移率を表記させて戴きました(表1)。 「ⅡA期を通して、反対被蓋であった者r(109名)」の内、「ⅢA期に正常被蓋に戻った者r-N(7名)」は、6.4%ということに なります。93.6%は、自然治癒しないことを示しています。 3.反対咬合の成因 -筋機能の不調和-反対咬合の筋機能上の問題点は、次の3点と考えられています。「タイトな上口唇」、「ルーズなオトガイの緊張」そして、「低位舌」です。「タイトな上口唇よる圧力」は、上顎の水平方向への成長を抑制する様に、後方に引き戻す力として機能していると考えられます。それに反し、「ルーズなオトガイの負の圧力」は、下顎骨の前方への成長を、許容していると考えられます。そして、「低位で機能する舌」は、嚥下の都度、下顎骨を前方に押し出す圧力として機能すると考えられています。 4.反対咬合用機能的矯正装置 -ムーシールド™の構造と機能および使用方法-反対咬合用の機能的顎矯正装置には、以上の3点を、改善できることが要求されます。「上口唇圧を排除」し、 「オトガイ部に過緊張」を起こし、そして「低位舌を挙上」する機能が要求されます。 ムーシールド™(図1、2)は、上顎歯列唇側、下顎歯列舌側及び口腔底を、ワックスでリリーフした後、即時重合レジンを築盛して製作する一塊の構造体です。基本的な構造は、スプリント部分を主体としています。そこに、舌を挙上する領域と、上口唇圧を排除するシールド領域が付与された構造体です。 装着後、嚥下時、オトガイに過緊張が起こることを、患者に認識させる事は、大切なポイントの一つです。機能的矯正装置は、自動的な筋訓練装置として機能します。本装置は、就寝時のみの使用で、目的を達成することが可能です。保定の意味も含めて、1年間をめどに使って頂きます。また、その後は、定期的に健診を継続していく事が重要です。 5.ムーシールド™による早期初期治療 -反対咬合の早期初期治療例-反対咬合の早期初期治療例を示します。
6.早期初期治療、難易度の判定将来、治療困難な反対咬合症例に発展する可能性の高い症例の、臨床的な鑑別診断基準は、次のように考えられます。 7.おわりに -早期初期治療・Ⅰ期治療・Ⅱ期治療-
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